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2009年02月01日

●堂目卓生『アダム・スミス』

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「本書は、『道徳感情論』におけるスミスの人間観と社会観を考察し、その考察の上に立って『国富論』を検討することで、これまでとは異なったスミスのイメージを示す。

「『道徳感情論』においてスミスが描いた人間像は、「賢明さ」と「弱さ」の両方をもつ人間であった。「賢明さ」とは胸中の公平な観察者の判断にしたがって行動することであり、「弱さ」とは胸中の公平な観察者の判断よりも自分の利害、あるいは世間の評判を優先させて行動することである。・・人間が社会的存在であるということは、人間の「賢明さ」の原因であるとともに、「弱さ」の原因でもあるのだ。」

「富の主要な機能は、人間を存在させ、繁殖させ、その生活を便利で安楽なものにすることである。しかしながら、スミスは、富の中に、それ以上の機能を見出していた。それは、人と人をつなぐという機能である。」

「スミスは、真の幸福は心が平成であることだと信じた。そして、人間が真の幸福を得るためには、それほど多くのものを必要としないと考えた。・・与えられた仕事や義務、家族との生活、友人との語らい、親戚や近所の人びととのつきあい、適度な趣味や娯楽。これら手近にあるものを大切にし、それらに満足することによって、私たちは十分な幸せな生活を送ることができる。また、・・たとえ人生の中で何か大きな不運に見舞われたとしても、私たちには、やがて心の平静を取り戻し、再び普通に生活していくだけの強さが与えられている。・・
 諸個人の間に配分される幸運と不運は、人間の力の及ぶ事柄ではない。私たちは、受けるに値しない幸運と受けるに値しない不運を受け取るしかない存在なのだ。そうであるならば、私たちは、幸運の中で傲慢になることなく、また不運の中で絶望することなく、自分を平静な状態に引き戻してくれる強さが自分の中にあることを信じて生きていかなければならない。私は、スミスの到達したこのような境地こそ、現代の私たちひとりひとりに遺された最も貴重な財産であると思う。」

いやぁ、面白い。日経でエコノミストが選ぶ経済図書ベスト1位に選ばれた・・ということで、経済学の専門的な話かと思いきや、人の幸福、社会生活の根本がどっかりと描かれている。ひじょうに面白いし、"アダム・スミス"という人の考えにこれまで抱いていたイメージも覆ったことも確かなのだが、逆に、そう奇をてらった展開にも思えないし、経済学の古典中の古典がどうして、これまでこういう分析をなされてこなかったかのほうが不思議。
あとは・・ここで示されたある種の"諦観"のようなものが、今の時代とマッチしていていることも、この古典再解釈を楽しい読み物にしていると思える。

投稿者 esaka : 2009年02月01日 02:17

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