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2008年11月09日
●養老孟司+竹村公太郎『本質を見抜く力』
凄いタイトル。90年代前半ぐらいまでは、こうした大御所知識人(と言われる人)が、専門外のことまで、これがわからないのはバカ、という形で、バッタバッタと断定しまくる書籍というのがけっこうあって、それをまた、それなりにありがたく受け止めていたものなのだが、90年代後半から、徐々にそうしたテイストのものが少なくなってきたように思う。専門外のことまでに断定する勇気?蛮勇?を持つ人が少なくなってきたとも言えるだろうし、あやふやなことを根拠もなく断定すると、ネット経由ですぐ専門家の指摘を受け、それが大きく広まる、ということもあるのだろう。

とすると、やはり、ネット以後は知識人の発言の形態というか、編集の形式も少しずつ変わってきていたようだ。
で、そんな時代にあって、めずらしく蛮勇をふるう方による対談、鼎談集。語りだから、より根拠があやふやな断定が盛りだくさん。まあ、だからこそ、楽しめる部分もある。
しっかりとデータにあたり、わかっていること、わからないことを区別し、丁寧に議論を組み立てることは、ネット以後に受け入れられやすい形なのだが、この形は、ときに結論があやふやになって、一見、地味になりがちだ。
という意味では、これは一見、派手な議論。派手に散らばり過ぎという感じもするが・・
「竹村 ……いま、人類にとって最重要課題は「このままではエネルギーが枯渇に向かうからどうやってそれを省力化、省エネ化していくか」ということです。CO2がどれほど増えるか、温度がどうなるかということは、結局正確にはわかりませんし、それらの数値を信用しても仕方がないと思いますね。」
「養老 ……炭酸ガスの削減というのは、要するに石油資源の削減ということです。削減して石油価格が高騰し、みんなで少しずつ小出しに使うようになれば、石油会社の寿命と収益はどんどん伸びる。頭がいいなと思うますね。一昨年、収益世界一になった企業はエクソンモービルでした。しかも、一つの企業としては史上最高の利益です。」
CO2問題よりも、石油の枯渇のほうが大きな問題なのでは?というのは、このブログでも言ってきたことで、以前はあまり一般的は視点ではなかったと思うが、徐々に常識になっているのか、と驚いてメモ。
投稿者 esaka : 02:54 | コメント (0) | トラックバック
2008年11月02日
●濱野智史『アーキテクチャの生態系』
「WIRED VISION」で、ブログを連載していただき、その連載がもととなって書籍化されたから、というわけではないが、近年刊行されたITに関わる評論の中では、傑作と言える
のではないだろうか。

ブログ連載が元となっているのは、6、7章だけで、書籍の全体像は存じ上げず、最初に手に取った時には、予想以上のボリュームに、やや心配になったのだが、読み進めると、その分量の多さは、濱野さんの初の書籍という力の入れようがわかり、納得する出来上がり。そして、その分量の多さにも関わらず、とても読み進めやすいのは、濱野さんの論理的思考が明快で、その展開がスムーズだからだろう。
「アーキテクチャ」と「日本」に着目し、具体的には、2ちゃん、Mixi、ニコニコ動画、といった日本独特のソーシャルウェアに関する分析が行われているわけだが、ここに至る背景には、レッシグ、東浩紀、北田暁大、佐藤俊樹・・といった、情報社会に関する最前線の思想をしっかりと汲み取った上で、まさに「今」と「日本」が考えられていて、目の配り方のバランスが、まさに絶妙と言える。
そのために、濱野さんが「はじめての書籍」にかけたエネルギーも感じて、これだけのボリュームになったことも納得できる。ITに関しては、批評の分野でもアメリカからの輸入超過だが、この本は、十分、英訳され、英語圏で読まれる価値のある内容だと思えた。
書籍を編集された、NTT出版の小船井さんも、お疲れさまでした〜。言及されるウェブサービスの写真などが入っていると、より取っ付きやすかったと思いましたが、どうでしょうね・・。
投稿者 esaka : 03:16 | コメント (0) | トラックバック
2008年11月01日
●岩田規久男『景気ってなんだろう』
久しく経済学のお勉強から遠ざかっていたのだが、このところの「100年に一度の津波」ということで、この事態を経済学者の皆さんはどうお考えなのか知らねば、と思い、まずはいつものように岩田先生に頼る。
出版は、10月10日だが、リーマンショック以降の世界経済の激動が、ここに反映されていれば、なおタイムリーだったんだろうな。
相変わらず、素人を相手にしていただいても、わかりやすく本質を解説していただいているように感じる。この本での鍵は、「景気を安定させる方法はあるのだろうか?」という6章だろう。で、公共投資や減税が期待されたほど景気対策には寄与しないこと、インフレターゲットの有効性が説かれる。