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2004年05月28日

●木村忠正『ネットワーク・リアリティ』

豊富な調査データを基に、中国、韓国、アメリカと日本のネット利用の実態を浮かび上がらせる。特に、4章の韓国との比較はめちゃ面白い。去年、橋元良明氏の講演についてエントリーしたけれど、そこで紹介されていた調査のデータが、この本でも紹介されている。
日韓の学生ともに、コミュニティサイトによくアクセスするのだが、その利用形態がかなり異なるのだ。日本では、ネットを匿名空間と認識し、個人情報をあまり出さず、オフ会に参加するということもないが、韓国では実名利用とオフ会が盛んのようだ。

「韓国では(少なくともソウルの大学生)では社会的日常生活における自己とネットワークでの自己は地続きでつながっている。・・韓国では、インターネットが社会的ネットワークを拡大したり、既存の社会的関係を強化する空間として昨日する方向を持っているが、日本社会ではそれが欠如していることを意味している。」
また、自身のホームページを持って情報発信するかどうか、という積極性も(「日記」以外!!)韓国の学生のほうが高い。それでいて、自宅音声電話、携帯音声、携帯文字通信、の1日の利用量を比較したとき、日本は携帯文字通信が突出して高い。そこから、
「日本社会において、コミュニケーション主体が「カプセル化」していくなかで、対人関係の心理的距離が携帯文字通信による距離感覚を基準値にしつつあるからではないだろうか。あるいは、文字通信がもつ心理的距離感覚が、日本社会における対人関係の社会心理空間にもっともよく適合しているからではないか。」
またウェブ日記についても、こう分析。
「他者に強い影響を及ぼすこと、他者から強い影響を与えられることを回避しようとするデジタルカプセル人間にとって、まさに適切な社会心理的距離感なのではないだろうか。」
その他、ひじょうに面白い指摘は多い。が・・最後の5章で「高度消費社会としての成熟と少子高齢化の進展から、日本経済はパイ=付加価値を膨らませる力を失いつつある」という前提のもとに、ITが何ができるのかが考察されるのだが、この前提そのものがどうもしっくりこない。少子高齢化問題については、原田泰のこういう指摘もあるし。その前提はさておき、指摘される日本での情報リテラシーの現状は確かに大きな問題だろう。スウェーデンでは、小中高の教員の半数近くに無償でPCを配布するなど、各国で巨額の社会的投資を行っているが、日本ではこの点が圧倒的に劣っている。また、日本では、「インターネット利用率」にケータイからの利用を混ぜて上げ底している状態。著者は「産業セクターとしてのIT」ではなく「社会増強力としてのIT」にもっと力を入れるべき、と唱える。その方向には賛成なのだけれど・・。

投稿者 esaka : 2004年05月28日 23:40

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